トーナメントで20BB以下のショートスタックになると、フロップ以降をじっくり戦う余裕はほとんどありません。15BB以下では、全額を賭けるオールイン(プッシュ)か、降りるかの2択にほぼ絞られます。
残り20BB前後で迷い始めた方に向けて、スタック帯ごとの戦い方と席別の早見表、相手のオールインを受ける基準を解説します。
- トーナメントのショートスタックは20BB以下が目安。16〜20BBは「オープン(最初に入れるレイズ)とオールイン返し」、15BB以下は「オールインかフォールド」の2択に切り替える
- スタックが減るほど相手を降ろす力(フォールドエクイティ)が小さくなるため、スタックを減らす前に自分から先手を取る
- 相手のオールインを受ける時は、ポットオッズ(コールに必要な額とポットの比率)から必要な勝率を出し、相手がどの席から打ってきたかで判断する
ショートスタックとは何BBから?20BB以下で戦い方を切り替える(結論)
スタックの深さに決まった定義はありませんが、トーナメントでは次のように分けて考えるのが一般的です。
| 区分 | スタックの目安 | 戦い方の特徴 |
|---|---|---|
| ディープ | 40BB以上 | 通常のオープンレイズで参加し、フロップ以降もじっくり戦える |
| ミドル | 20〜40BB | オープンはするが、3ベットされると「オールインか降りるか」に近い判断になる |
| ショート | 20BB以下 | オールインを軸に戦う。この記事で扱う範囲 |
※3ベット=オープンレイズにさらにレイズを返すこと。
なぜ15BB以下では、2BB程度の通常のオープンレイズで粘ってはいけないのでしょうか。手元に10BBしかない場面を考えてみてください。2BBのオープンレイズを打てば、スタックの「20%(5分の1)」を一気に場に出すことになります。
相手にコールされてフロップで手札が当たらなければ、チェックして相手にベットされた時点で降りるしかなく、手元には8BBしか残りません。外れたまま無理にベットを続ければ、残りのスタックを全て失います。
オープンレイズを選んだ時点で、「当たらなければ大きく減り、当たっても相手に警戒されてチップを増やしにくい」という難しい状況に入ってしまうのです。
最初から全額のオールインを選べば、相手に「コールして負ければ自分のチップも大きく減る」という重圧をかけられます。相手が降りれば、テーブル中央の2.5BB(ブラインド+アンティ)を戦わずに回収でき、10BBのスタックがそれだけで25%増えます。
5BB以下まで
スタック帯別の戦い方(16〜20BB/11〜15BB/10BB以下)
| スタック帯 | 基本のアクション | 立ち回りの注意点 |
|---|---|---|
| 16〜20BB | 小さめのオープン、または相手のオープンへのオールイン返し | オープンする前に、オールインを返された時に受けるか降りるかを決めておく。BB以外の席では、相手のオープンにただコールするのは避ける |
| 11〜15BB | 自分から先にオールイン(オープンプッシュ)か、フォールド | 通常のオープンレイズは原則使わない。下の早見表の15BBの列を基準にする |
| 10BB以下 | オープンプッシュの範囲を広げる | 早見表の10BBの列を基準にする。5BB以下まで待つと相手を降ろしにくくなる |
16〜20BBの帯は、まだ通常のオープンも使える「プッシュ&フォールドの一歩手前」です。この帯の具体的な戦い方は、早見表のあとで詳しく解説します。
【早見表】ポジション別・残りBB別プッシュ&フォールド基準表
プッシュ&フォールドの理論上の範囲を参考に、初心者〜中級者が実戦卓でスマホを見ながら判断できるよう、覚えやすく丸めた目安の早見表です。アンティの有無や相手の傾向で、最適な範囲は前後します。
| 座席(ポジション) | 15BBのプッシュ | 10BBのプッシュ | 立ち回りの目安 |
|---|---|---|---|
| UTG(先頭座席) | 88+, ATs+, AJo+, KQs | 55+, A8s+, ATo+, KTs+, QJs | 後ろに大勢いるため、エースやペアを中心に厳選 |
| MP / HJ(中盤座席) | 66+, A8s+, ATo+, KJs+, QJs | 33+, A5s+, A8o+, K9s+, JTs | 中位以上のスーテッド絵札まで勝負範囲を拡大 |
| CO(カットオフ) | 44+, A2s+, A8o+, K9s+, QTs+, J9s+ | 22+, Any Ax, K5s+, K8o+, Q8s+, J8s+ | 後ろが3人しかいないため、15BBではスーテッドのエースすべてとA8o以上、10BBではすべてのエースでプッシュ |
| BTN(ボタン) | 22+, A2s+, A5o+, K6s+, Q8s+, 87s+ | 22+, Any Ax, Any Kx, Q4s+, J7s+, 54s+ | 後ろが2人だけのため、広い範囲の手で積極的にブラインドを刈り取る |
| SB(小ブラインド) | 22+, Any Ax, K4s+, Q7s+, J8s+ | 全ハンドの約45%(Any Pair, Any Ax, Any Kx, Any Qx) | BBと1対1のため、非常に広いハンドで全額勝負 |
※「s」は2枚が同じマーク(スーテッド)、「o」は違うマーク(オフスート)、「T」は10を指します。
※「Any Ax」はエースと任意の数字の組み合わせ(A2〜AK全て)を指します。
※「+」はその数字以上の組み合わせ(例:88+なら88, 99, TT, JJ, QQ, KK, AA)を指します。
※この表は、全員がフォールドして自分の番が来た時に、自分から最初にオールインする場面専用です。
16〜20BBの戦い方:オープンとオールイン返しの使い分け
自分からオープンする時は「返された時の対応」を先に決める
16〜20BBあれば、2BB前後の小さめのオープンレイズはまだ使えます。ただし、後ろからオールインを返されると、すでに出した2BBを捨てて降りるか、全額で受けるかの判断を迫られます。
オープンする前に、「この手はオールインを返されたら受ける」「この手は降りる」と決めておくことで、迷ってチップを失うのを防げます。
相手のオープンには「降りるかオールインを返すか」
前の人のオープンレイズに対して、全額のオールインを上から返すプレイを「リスチール」と呼びます。16〜20BBで特に効果を発揮するのがこのプレイです。
たとえば18BBの時に、COが2BBにオープンし、あなたがBTNでオールインを返したとします。ポットにはオープンの2BB、ブラインドの1.5BB、アンティの1BBで合計4.5BBがあります。全員が降りれば、スタックの25%にあたる4.5BBを戦わずに獲得できます。
リスチールが向いているのは、COやBTNなど、後ろに残るプレイヤーが少ない席から広くオープンしてくる相手です。広くオープンしている分、オールインを返されると降りる手が多くなります。
逆に、UTGなど前の席からオープンした相手は強い手に絞っていることが多く、オールインを返してもコールされやすいため、こちらも強い手に絞ります。
返す手は、コールされても勝負になる中くらい以上のペアや、強いエースが中心です。手札にAやKがあると、相手がAAやAKなどの強い手を持っている組み合わせが減る(ブロッカー)ため、オールインを返す手としても向いています。
ただコールしてフロップを見に行かない
16〜20BBで相手のオープンにただコールすると、フロップで外れた時に降りるしかなく、スタックだけが減っていきます。安く参加したい場面では、別の考え方としてリンプを使う戦術もあります。浅いスタックでのリンプの使い方は、ショートスタックのリンプ戦術|15〜25BBで効く3つの場面で解説しています。
相手のオールインにコールする基準
自分から先にオールインする時と違い、相手のオールインを受ける時は、相手を降ろして勝つことはできません。手札の勝率だけで勝負になるため、早見表よりもずっと強い手が必要になります。
目安は、ポットオッズで「何%勝てばコールが得になるか」を出すことです。たとえば、BBアンティ(1BB)のある大会で、あなたがBBにいる時に、BTNが10BBでオールインし、SBが降りたとします。
ポットには相手の10BB、SBの0.5BB、あなたのBB1BB、アンティ1BBで12.5BBがあり、あなたは追加で9BBを払うかどうかを決めます。コールすると最終的なポットは21.5BBになるため、必要な勝率は9÷21.5で約42%です。
次に、相手がどの席からオールインしてきたかを考えます。BTNやSBの短いスタックは、早見表のとおり広い手でオールインしてくるため、エースを含む手や多くのペアなら42%を超える場面が多くなります。一方、UTGからのオールインは強い手に絞られているため、BTNやSBの時よりはっきり絞ります。
迷う時は、AKやTT以上など強い手を中心にコールすると安全です。入賞直前のバブル期は、負けた時の損が大きくなるため、さらに絞ります。バブル期の考え方は、ICM(賞金の配分を考えてチップの価値を測る考え方)を含めて、トーナメントのバブル戦略|ICMで変わるスタック別の立ち回りで解説しています。
なぜ「待つこと」が自滅につながるのか?(フォールドエクイティの減少)
初心者がショートスタックでやってしまいがちなのが、「AAやKKが配られるまで我慢して待とう」という消極的な守りです。
オールインが強い理由は、「相手をフォールドさせて、戦わずにチップを拾える見込み(フォールドエクイティ)」があるからです。12BBのオールインなら、相手も「コールして負けたら痛い」と感じ、中途半端な手札を捨ててくれます。
しかし、待ちすぎてスタックが4BBまで削られると、相手は「4BB払うだけで勝負できるならコールしよう」と判断します。ポットオッズが良すぎるため、相手はほとんど降りてくれません。待ちすぎたプレイヤーは「相手を降ろして勝つ」という武器を失い、手札のめくり合いに任せるしかなくなるのです。
スタックが10〜15BBあるうちにプッシュを打てば、相手が降りてチップを拾える見込みがあります。コールされても一定の勝率が残るため、両方を合わせると期待値(くり返したときの平均の損益)がプラスになりやすくなります。スタックを減らす前に、自分から先手を取りましょう。
実戦でプッシュ範囲を微調整する「3つのアジャスト条件」
早見表の基準を基本としつつ、同卓者の特徴に応じて判断を調整する3つのポイントを解説します。
条件1:後ろのプレイヤーが極端にタイト(降りやすい)な場合
後ろのブラインドに座っているのが、「入賞したくてチップを失いたくない」と慎重になっているタイトなプレイヤーだとします。その場合は、早見表よりもプッシュする手の範囲を広げます。ボタンやカットオフからは、表より一段広い手でも積極的にオールインし、チップを回収しましょう。
条件2:後ろにチップリーダー(特大スタック)が控えている場合
逆に、後ろに大量のチップを持ち「少しくらい負けても痛くないから広くコールする」というチップリーダーがいる場合は、フォールドエクイティがあまり期待できません。早見表の中でも上位の手札(強いエースや高めのペア)に絞ってプッシュするのが賢明です。
反対に、自分と同じくらい短いスタックのプレイヤーは、負けると敗退するためコールが慎重になり、プッシュが通りやすくなります。
条件3:バブル(入賞直前)でのリスク回避(ICMプレッシャー)
あと1人飛べば全員に入賞賞金が出る「バブル」の局面では、入賞の価値が大きく高まります。
自分がショートスタックであっても、周りにもっとチップの少ない「1〜2BBのプレイヤー」がいるとします。その場合は、無理に10BBをプッシュせず、そのプレイヤーが飛ぶのを待つ(フォールドする)判断が正当化されるケースがあります。
よくある質問(FAQ)
- Q. ポケットペア(22〜66)は10BBならどの席からでもプッシュしていいですか?
- A. 席によります。早見表のとおり、10BBならCO・BTN・SBでは22を含むすべてのペアがプッシュの目安です。一方、UTGは55以上、MP/HJは33以上が目安です。前の席ほど後ろに残っているプレイヤーが多く、誰かが強い手を持っている可能性が高いため、小さなペアは控えめにします。
- Q. 前のプレイヤーから先にオールインが入っている時もこの表を使えますか?
- A. いいえ、使えません。早見表は、自分から最初にオールインする場面専用です。相手のオールインを受ける時は、相手を降ろすことができず手札の勝率だけで勝負になるため、「相手のオールインにコールする基準」のとおり、ポットオッズと相手の席から判断します。
- Q. アンティがない大会でも、この早見表は使えますか?
- A. 目安としては使えますが、アンティがない分ポットが小さくなり、オールインで拾えるチップも減るため、表より少し狭めにプッシュします。アンティの有無で戦い方がどう変わるかは、アンティがある時の戦い方|広げる席とスチールに必要な成功率で解説しています。
まとめ:スタック帯ごとの基準を持ってトーナメントを戦い抜こう
- 原則1:20BBを切ったら、オールインを軸にした戦い方に切り替える
16〜20BBは小さめのオープンとオールイン返しを使い分け、15BB以下ではオールインかフォールドの2択に絞りましょう。 - 原則2:フォールドエクイティが残っているうちに、自分から仕掛ける
スタックが数BBまで減ってからでは手遅れになりがちです。相手を降ろす力が残っているうちに先手を取り、ブラインドとアンティを回収してください。 - 原則3:相手のオールインは、ポットオッズと相手の席で受けるかを決める
受ける時は相手を降ろせないため、必要な勝率を計算し、相手がどれだけ広くオールインしてくるかを考えて、早見表より強い手に絞りましょう。
キャッシュゲームとの構造差、アンティへの適応、浅いスタックでのリンプ術、そしてショートスタックの戦い方。ここまでで、トーナメントの終盤で迷わないための土台ができました。
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